09 Congos - コンゴ2011/03/03 00:50:05

09 Congos - コンゴ


 キューバ社会の中核のかなりの部分において、コンゴ出身者やConguitosの存在は今なお色濃い。よく知られている逸話や年長者たちの証言も、この民族がキューバの音楽性の統合過程に大きく影響したもののひとつであるという文化的形跡を啓示している。

 16世紀から19世紀の奴隷貿易の終焉までの間にキューバに連れて来られたアフリカ人をコンゴという言葉により特定する事ができた。彼らは、アフリカ中西部の古くからバントゥー族が居住するコンゴ川流域もしくはザイールの港から連れ出された者たちであった。

 カビルド・デ・ナシオン、カサの会堂もしくは単純に奴隷小屋といったいくつかのグループ分けによる階級が初期の文化要素の再建のために作られた。その要素は、激しい文化の融合過程において発達し、今日もなおその独自の旋律の音調、言語表現、リズムパターンなどにより、際立ったバントゥーの歴史における音楽文化を生み出したものである。

 コンゴのカビルドはキューバ中西部全土に渡り、前世紀半ばから今世紀初めにかけて最も輝きを放った。奴隷制の廃止とともに、有能な奴隷たちが新たな働き口を求めて都市やその周辺の地域に移り住んだ。コンゴ出身者とその子孫たちの数は膨大であり、時として一所に集中したのか彼らはcongueriasと呼ばれた。

 共同所有地にあるカビルドもしくは共同体は、音楽と踊りを主たる要素としてこれらの部族とその近隣グループの宗教と儀式の中心的な組織となった。

 20世紀には、これらの組織は社会経済との関係の中で、その存在意義を失いはじめ減少していた。それらは、わずかなキーマンを残すばかりという状態に至るまで徐々に消滅し続けたのだが、かろうじて現代まで残った貴重な宗教儀式もある。この収録に際しては、以下の4つのグループを抜粋した。

1. ヴィラ・クララ州サグア・ラ・グランデ地方のカビルド・クナルンゴもしくはソシエダド・サン・フランシスコ(1984年5月 現地録音)

2. シンフエゴス・パルミラ地方のカビルド・サン・アントニオ(1984年5月 現地録音)

3. サンクティ・スピリトゥス、トリニダーのカビルド・コンゴ・レアレス(1984年11月 現地録音)

4. ハバナ州マリエル、キエブラ・アチャのカビルド・サン・アントニオ(1984年3月 現地録音)

 マクータのダンスとリズムは最も通俗的な祝祭で、カビルドの創立記念日や大衆信仰により崇拝されている真理や魔力の融合的象徴とされるカトリックの守護聖人の日などの大切な祭典に捧げられた。

 マクータのダンスを見る機会に恵まれた者の説明によると、それは信仰の対象や場所のみならず、カビルドの教主や君主、または長への明確な忠順の意味を持つものであった。

 まず年長者のみによる行進または敬礼の様な形で始まる。その後、唄とリズムに合わせて一連のダンスがペアによって(組まずに離れた状態で)続くが、儀式上の順序や意味は忘れさられている。

 この旗章に対する敬礼やダンスは、旗章を預かりカビルドの徽章をつけおこなわれ、室内に組織のパワーの象徴や魔力の源となるものが残るとされる場所を礼拝する役割の者に導かれて真夜中近くに催される。

 現在では、マクータのダンスと音楽の複合は崩壊が進み、継承者グループの祝祭においてもダンスは忘れられ、唄も少なくなりつつある。祭事が減少するにつれ、正しい音程で唄ったり、この種の唄に呼応したりする事のできる者も減り、ベンベやパレーロといった他のジャンルの唄で代用せざるをえなくなってきている。

 そういう訳で、我々は苦心の末集める事のできたマクータのリズムや唄を貴重な音源と位置づけている。

 ここに収められた音源は、その古さという点で非常に興味深いもの、もしくは各カビルドの儀式的役割において最も象徴的であると思われるものである。音源の選定にあたり、音質やソリスト、コーラスと楽器のアンサンブルの間のバランスも考慮に入れておこなったが、一部にはソリストの唄に対する他者の驚きや当惑を表す声が入っているのが認められるであろう。

 マクータの唄には、パルミタ、サグア・ラ・グランデ、トリニダーのカビルドに由来する名称の楽器アンサンブルが伴われる。

 それらは地域の状況もしくは構造上の発展段階から同じタイプの楽器と思われるが、異なるバリエーションで演奏されている。

 パルミラとサグアの両面ドラムは、一番大きなものがンゴマもしくはカハ、一番小さなものはキンバンドゥもしくはキンバンソと呼ばれる。トリニダーでは同じものがそれぞれカハ、ボンボと呼ばれる。先述の2つの場合、キンバンドゥはカハの原型である円筒形の木の幹をくり抜いて作られ、管状で釘留めされた皮のついた形状を保持している。

 パルミラの一番大きなドラムにおいては、皮の張りはリングと張りを調節する鍵のコンビネーションにより加減される。そしてサグアのンゴマにおいては、そうした皮の張りの調整の他に、樽型の胴を作るために樽板が用いられている事に気づくであろう。

 トリニダーのドラムには、その形状において地域的な違いが見られる。それらは円筒形の木製の胴に、皮は縄と楔を用いて張られているのだが、これは全て19世紀にトリニダーのサンクティ・スピリトゥス地方のコンゴとカラバリ族の間に起こった文化の融合過程によるものである。

 打楽器は、木や金属の表面を叩くことによる基本的なアンサンブルに加え、パルミラでは鍬刃(グァタカ)を叩き、そしてその他の場合においては、ドラムの胴を一組の撥で叩くといった手法により新たな音色が作られるようになった。カヘーロ(カハ奏者)が手首に付けて鳴らす小さなマラカスもしくはンケンビ(瓢箪の実から作られた小さなマラカス)もたびたび用いられる。

 我々はマクータのリズム構成を個々に紹介するにあたり、単なる研究目的も含め一部の専門家にとっては興味深いであろうことからこれらを収録した。これはそのリズムパターンが、ボンボもしくはキンバンソのリズムに加えられたために既にその機能が事実上消滅してしまった第三のドラムのリズムである。

 キンフィティは、音楽とダンスの概念として、キューバ中西部に存在していた。しかしながら、我々の時代にはハバナの北西に存在するカビルド、サン・アントニオのみに限定されている。この名称は、楽器アンサンブルを特徴づけているフリクション・ドラム(摩擦によって音を出す膜鳴楽器)に由来しており、そのドラムはかつて偉大な魔力を持つもの、すなわち「礎となる楽器」と考えられていたものであるが、この儀式的意味は徐々に失われてきている。

 キンフィティの祝祭は、キエブラ・アチャ地方では、集団的もしくは個人的な重要性を持つ。とりわけ砂糖キビの収穫期の初めもしくは終わり、病気の回復や乾季に対する感謝、年間を通して行われるカビルドの祝祭といった行事を祝うために執り行われた。

 現在キンフィティの祝祭は6月12日と13日の、この組織のTa Makuenda yayaと特に関係の深いカトリック聖人のサン・アントニオの日にのみ行われている。

 この祝祭におけるキンフィティの音楽は、マクータ同様他の儀式的習慣である動物の生贄、祭壇の配置と装飾、儀式的水浴、供物や会食といった事が見られ、広義の祝祭体系に統合されている。

 キンフィティのアンサンブルには、鍬刃(グァタカ)を備えたキンフィティ・カハ、その他にカハ、ドス・イ・ドス、ウン・ゴルペと呼ばれる3本の小さなンゴマ・ドラムが含まれる。

 このグループのレパートリーは、現在ではわずか20曲にまで減少した。この中にはTa Makuendaに捧げられた唄もあるが、一般的にはバントゥ語とスペイン語が混ざり合った非儀式的な内容の唄であり、儀式的要素を消滅しつつカビルドの長老たちの許可のもと採用された古い労働や布告の唄が選定されたようである。

 広く融合した信仰を祀るパロ・モンテもしくはレグラ・パレラの会堂は、特に古いカビルドが完全に消滅してしまった地域においては、コンゴ出身者とその子孫たちの音楽やダンス表現のもうひとつの重要な継承手段であった。

 例としてここに抜粋したのは、コンゴの3つの祈祷と唄で(1984年5月 現地録音)、マタンサスのハグエイ・グランデ地方のパレーロたちが儀式あるいは祝祭で、祈祷の対象物もしくはンガンガ(神聖な器)の力を祈りながら唄っていたものである。

 パレーロの唄の演奏は、全く異なる楽器構成で、これは各伝承者の持つ核となる伝統とその後の発展性と符合する。この演奏では、トゥンバドーラ2本と鍬刃(グァタカ)が使用されていた。

 演奏と唄い手のグループを率いるテオドロ・エルナンデスは、コンゴ出身者の子孫でありtata nganga(司祭)、この地域全体で良く知られる人物である。

■ 収録曲

マクータの唄とリズム、カビルド・キナルンゴ、サグア・ラ・グランデ
・ ウンベ 0:49
・ クナニャンカ 1:13
・ イヤカ 1:12
・ エクーソ 1:44
・ ワニレロ 0:33
・ ミ ソパ 1:05

キンフィティの唄とリズム、カビルド・サン・アントニオ、キエブラ・アチャ
・ タ マクエンダ 1:14
・ キブラヤヤ 1:21
・ トゥ キエレ 1:36

マクータの唄とリズム、カビルド・サン・アントニオ、パルミラ
・ ルペンバ 1:34
・ クナニャンガ 1:39
  
パレーロの唄とリズム、アグラモンテ
・ マニングァラ 1:10
・ ペロ サポーネ 1:31
・ ネンゴ ネンゴ 1:40

マクータの唄とリズム、カビルド・コンゴス・レアレス
・ アンドゥレ アンドゥレ 1:22
・ コンゴ レアル 1:49
・ カラベラ 1:48

ミレナ、記録の為の分割演奏
・ ムラ 0:36
・ ムラ、グァグァ 0:47
・ ムラ、グァグァ、セグンド 0:47
・ ムラ、グァグァ、カハ 1:34
・ ミレナの唄とリズム 2:56


Antología de la música afrocubana.
Liner notes by María Teresa Linares. EGREM. col.0011.



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コメント

_ Vacunao ― 2011/03/16 09:13:35

Congo系はいろいろあるにはあるのですが、演奏も踊りも一緒でとなるとかなり迷いました。
CDの後半Congo real~Mirenaはなかなか動画も落ちてないですが、
http://www.youtube.com/watch?v=1NA_05Mpj7E
Makutaは、Afrocuba de Matanzasから
http://www.youtube.com/watch?v=a5IMLjKBu9Q
でいかがでしょう。

あと、Palo系では以下
Adonis Panter Calderon y Yoruba Andabo
http://www.youtube.com/watch?v=-P8VDfh8Tz0
JJ
http://www.youtube.com/watch?v=E6V50n0c3ac&playnext=1&list=PL6B5052C8D0A3C6A8
1984白黒で画像悪いですが、JJのパフォーマンスから。我が師匠も高々と跳ねています。

_ 庵主 ― 2011/03/16 12:52:12

> Vacunaoさん

動画リンクありがとうございます。
それにしてもJJのパフォーマンス凄いですね。
こんな群舞中々日本では観ること出来ないでしょうね。
youtubeに感謝です。

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