04 Musica Arara - アララの音楽2011/01/29 16:28:48

04 Musica Arara - アララの音楽


 殖民時代のキューバで増大した奴隷にはダオメー地域出身者も多数おり、彼らは一般的にアララと呼ばれた。アララはそれぞれの故郷は異なるが、共通する文化を持つ多様な民族や部族から成るグループである。

 カビルドにおけるグループ分けは、他のカビルドと同様に、新しい生活に適応するための変化を伴いながらも、アララの宗教や芸術文化を継承した。彼らは支配階級の文化的抑圧に屈することなく、次の世代へ口述伝承をおこない、遠くダオメーの祖先の習慣や説話、音楽や踊りを連綿と継承していった。

 アララのカビルドは17世紀に創設され、メンバーの出身地の相違が反映され他の宗派の間ではそれぞれアララ・サバルー、アララ・マヒノ、アララ・ダオメーと呼ばれていたが、どうにか民族的、文化的統合を妨げるまでには至らなかった。

 昨今ではこうした信仰は消滅の一途をたどっているが、これは教育と、歴史上これらの宗教活動を束縛されてきた人々の文化レベルの発達の論理的な結果である。その存在は、地方自治体のペリコ、マキシモ・ゴメス、ホベラノスとマタンサス・シティといった限られた地域にまで減少している。

 収録されている唄とリズムは、1981年6月15日、Agrupacion Folklorica de Jovellanos “Ojun Degara”の拠点で録音された。このグループは、ほぼバロ家のメンバーによって構成される。彼らは昔の砂糖キビ工場「サンタ・リタ・デ・バロ」、現在の「レネ・フラガ」の奴隷時代にまでさかのぼるアララ・ダオメーの伝統を継承している。この一家の主要人物はエステバン・バロで、20世紀始めにホベラノスにて、彼らの祭式を公に執り行うためにその地域の全てのアララ儀式の従事者を集める目的で“San Manuel y sus descendientes”を創った。特筆すべきは、エステバン・バロはフェルナンド・オルティス博士に、彼の民俗学的、音楽的研究において非常に有用な情報を提供した事です。

 長年に渡り、バロ家は伝統文化を維持するために多大な貢献をしており、特に伝統的なアララ文化である音楽や踊りを顕示するという思想のもと、Movimiento de Aflicionados de la CTC(キューバのアマチュア運動家連合)とSectorial Municipal de Cultura(文化内政セクター)と関係する民族音楽グループOjun Degaraを1977年に創立した事は重要な事実である。

 この収録の1曲目は、部族が永遠の命と美を祈願して崇めた美しい鳥Ojun Degaraの伝説を唄ったものである。この古い唄がグループのシンボルであるという観点で、Ojun Degaraと名づけられ、公の演奏の場においてもテーマとして使われている。

 次に収められているのは、唄の伴奏として最も特徴的な楽器のリズムである。各ドラムで演奏されるリズムパターンが、オガン(鍬刃)とチェレ(メタル・ラットル)のリズムを伴いそれぞれ演奏される。

 残りの収録曲は、儀式の間の演奏順に従って収められた、フォドゥーセス(神々)と先祖を讃える一連の唄である。彼らの儀式によると、これらは以下のように分類される。

   ・ フォドゥーセス(神々)の唄。これらはlyawo(イニシエーションを受けた信者)を通して各フォドゥン(神)を儀式に迎え入れる目的で作られた。
   ・ クトゥトと呼ばれる、先祖を讃える唄。
   ・ 喜びの唄。フォドゥーセスが儀式に現れると、全員を楽しませるために唄われる。

 最後の曲は、フォドゥーセスと先祖に儀式を無事に終えられたことへの感謝の唄である。

 全ての曲において、ソロとコーラスの掛け合いにより構成されている。唄い手はハシモと呼ばれ、曲の構成とガイドの役目を担う。男女どちらでもなり得るが、ここではミゲリア・バロが務めている。

 演奏は4つのドラムで行われるが、うち3つはやや円錐形のドラムで、胴の内側へつながる締め金を縄で締めて皮が張られている。もう1つは、皮が木栓止めされた小さな円柱形のドラムである。それらには赤、白、緑、青の線が描かれている。

 ドラムは通常カハ、カチンボ、ムラと呼ばれ、これらはユカドラムと一致しているのだが、事情通によるとこれらはフンガ、フンゲデ、フンチート、フンと呼ばれるようである。フンガは一番大きなドラムで、撥1本と叩き手の左手で即興で演奏される。フンゲデとフンチートは同様のサイズで、撥2本で演奏されるが、前者はスターターの役割を、後者はテンポを維持する役割を担う。フンは撥1本で演奏されるが、このドラムの役割はフンチートと同様であることから、常に使われる訳ではない。

 これらのドラムに3つのイディオフォノス(金属製の打楽器)が加わる。オガン(鍬刃)は鉄棒で叩いて鳴らし、2つのチェレはメタル・ラットルである。

 アホスィの2曲めは手拍子がつくが、これは唄い手が自身で行う。これはアララグループの特徴である。またアララの儀式やOjun Degaraの序奏では、それぞれの唄に象徴される神の特徴を表す装束による踊りが伴われる。


■ 収録曲

1. Ojun Degara 2:39
2. フェレケテ(ドラム) 1:57
- オガン、チェレ
- オガン、チェレ、フンチート
- オガン、チェレ、フンゲデ
- オガン、チェレ、フンガ
- 全楽器
3. ダルアー(ドラム) 1:34
- オガン、チェレ
- オガン、チェレ、フンチート
- オガン、チェレ、フンガ
- 全楽器
4. フラホ・タトゥオ 0:56
5. アルグェ 1:12
6. アフアングン 2:22
7. クトゥト 2:41
8. エビオソ 2:13
9. フェレケテ 2:26
10. フォドゥ・マセン 2:32
11. アダノ 2:32
12. ダルアー 2:41
13. アホスィ 2:15
14. アホスィ(手拍子) 1:53
15. オサイン・ソボラ 2:11
16. 喜びの唄 1:46
17. 喜びの唄 2:44
18. 喜びの唄 1:57
19. 神々への感謝の唄 2:24


Antología de la música afrocubana.
Liner notes by María Teresa Linares. EGREM. col.0011.



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